北朝鮮を巡る情勢が新たな展開を見せている。
南北首脳会談と米朝首脳会談が立て続けに行われそうだ。
これはわが国にとって歓迎すべき事かどうか。
いくつか断片的な情報を。
「(北朝鮮への)国際的な経済制裁が続く限り、
中国への依存をゼロにできない。
制裁解除には核兵器の放棄が必要だが、それはあり得ない。
金王朝の維持には核兵器が不可欠と信じているからだ。
そうなると自国の経済成長が唯一の選択肢となる。
他国への依存をゼロにできないまでも、
経済が回復すれば依存を減らすことはできる。
一見矛盾するように見える核と経済の両立こそが、
金正恩が(先代の『先軍政治』に代わって)掲げる『並進路線』だ。
実際、核兵器も軍の影響力低下に役立つ。
金正恩は目下、核兵器とミサイルを防衛の要に位置付けており、
大規模な通常戦力の必要性は低くなった。
そのため、国家の安全保障を犠牲にすることなく軍から資源を
剥ぎ取ることができる」
(釜山大学准教授、ロバート・E・ケリー)
「実際に『第2次朝鮮戦争』が勃発すれば、
かなり悲惨な事態を招きます。
政府関係者によると、軍事衝突による被害想定では、
ソウルは3日以内に陥落し、軍人、民間人含めて
合計35万人の死者が出ます。
その後、米軍が北朝鮮を完全制圧するにしても2ヶ月はかかり、
その間に…百万から3百万人の死者がでる。
…しかもこれは核兵器が使用されない場合の試算です」
「(ロシアのプーチン大統領が朝鮮半島情勢について
『ゲームに金正恩氏は勝ったと思う』と発言した)背景には、
在イスラエル大使館移設問題で中東に足を取られ始めた米国に、
中東と北朝鮮の二正面で軍事作戦を展開する余力はない、
という情勢分析がある」
(元外務省主任分析官、佐藤優氏)
「米朝交渉を進める米国側の大きな動機は…米国第一主義…
米国が取りあえず安全であればいい、同盟関係すら二義的なものに
なりうる、という危険な考え方です。
つまり、米国本土を射程に収めるICBMの凍結、あるいは将来的な
廃棄さえ合意できれば、米国の安全保障は担保される。
これがまさに米朝直接交渉のメインテーマとなる恐れがある。
他方、日本にとっては、長距離ミサイルが廃棄されても、
核搭載可能な中距離ミサイルに日本列島全体がすっぽり覆われる状況に
置かれたままとなります」
「昨年11月のアジア歴訪で、トランプ大統領は、
日中韓でそれぞれ発言のトーンが異なりました。
…北京では強硬発言は鳴りを潜め、『北朝鮮の非核化』
の必要性に言及するだけでした。
…6ヶ国協議の構成国で、最も強硬なのは、
日本ということになります。
…韓国、中国、ロシアは、いずれも
『事を起こしてもらっては困る。
北朝鮮との対話路線を現状では受け入れざるを得ない』
という立場であることを日本も認識しておく必要があります」
(外交ジャーナリスト、手嶋龍一氏)
「関係者によれば…自衛隊トップ(統合幕僚長)の
河野(克俊)海将は…今後の北朝鮮クライシスについての
『情勢判断』を発言しているという。
…(その発言によれば、アメリカが決断する選択肢として最も
可能性が高いのは)〈北朝鮮の核兵器と『IRBM(中距離弾道
ミサイル)』の保有をアメリカは認める。
つまり、軍事的に現状を追認するという方針だ。
だが、ICBM(大陸間弾道ミサイル)だけは、
検証可能な形でかつ不可逆的に廃棄させる〉
…(防衛担当記者いわく)
『河野海将は、最近、“備えよ”という言葉を部下たちに
何度も口にしていると聞いています。
つまり、アメリカ軍幹部たちの話から感じたことから
導き出したのは、自国の戦略を最優先するアメリカに依存する
のではなく、自主防衛の程度を向上させる要あり、と河野海将は
確信したーー多くの自衛隊関係者はそう受け止めています』」
(作家、麻生幾氏)
今のところ、日米韓のうち日本だけが、
北朝鮮との首脳会談から外れた形になっている。
それで、果たして拉致被害者の帰国をはじめ、
わが国の安全保障にとって好ましい結果に繋がるのかどうか。